家庭裁判所の遺産分割調停に進行について
家庭裁判所で遺産分割調停をおこなう場合は、次のように段階的に進められていきます。
- 相続人の範囲確定
- 遺産の範囲の確定
- 遺産評価の確定
- 各相続人の取得額の確定
- 遺産分割方法
そのため、遺産分割調停を申し立てる前に、どの段階で問題が発生するのかを事前に見極めることが重要です。
1 相続人の範囲確定について
相続人の範囲確定というのは、誰が相続人なのかということを確定することです。
通常は戸籍謄本で法定相続人を確定できます。
しかし、「養子縁組が無効だ!」として、戸籍上は法定相続人であっても、そのことについて争いがある場合には、遺産分割調停では相続人の範囲を確定できないことになります。
そのため、別途、養子縁組無効の裁判等の人事訴訟で解決する必要があります。
そして、解決後に遺産分割調停をおこないます。
2 遺産の範囲の確定
次に遺産の範囲を確定します。「何を分けるのか」ということが問題になります。
これも実務上は紛争になることが多いです。
何が遺産の範囲になるのか争いがあり、調停で範囲について合意することができないときは、遺産分割調停を取り下げて、地方裁判所で遺産の範囲に含まれることの確認訴訟を提起します。
実務上で注意が必要なのは、遺産分割「調停」であれば当事者の合意で遺産の範囲に含めることができても、「審判」になってしまうと含まれないものがあることです。
例えば、負債、葬儀費用などは、調停であれば当事者全員が合意すれば遺産の範囲に含めることができますが、審判では当事者全員が希望しても含めることができません。
しかし、相続不動産を貸すことによって得た賃料や、株式の配当金等は、当事者全員が合意すれば、調停でも審判でも遺産の範囲に含めることができます。
3 遺産評価の確定
遺産の範囲が確定すれば、その遺産の評価額を決めます。
不動産については、不動産会社の査定書等を提出したり、場合によっては鑑定をおこないます。
鑑定には数十万円の費用がかかりますので、できれば査定書等をベースに決定できれば、当事者の負担も軽くて済みます。
株式などは相続税の申告書における評価を用いることも多いです。
評価が必要なのに、評価の合意も鑑定も拒否ということですと、遺産分割調停はできないことになります。
4 各相続人の取得額の確定
以上の経過で、相続人が誰で、相続財産が特定され、その価額も決まった場合には、個々の相続人の取得額を決めることになります。
寄与分が問題になる場合には、相続分に加算
特別受益が問題になる場合には、相続財産に持ち戻し
ということになります。
しかし、寄与分や特別受益の有無等に争いがある場合には、別途これらを定めるための調停または審判をおこなう必要があります。
5 遺産の分割方法の確定
4で各相続人の取得額が確定しましたので、実際にどのように分けるのかを確定します。
遺産の分割方法には、
・現物分割 その物を分ける方法
・代償分割 物を分けるが、差額を金銭調整すること
・換価分割 売却して金銭を分配すること
などがあります。
一般の方の感覚からすると、「遺産分割調停であればすべての問題を解決できる」と感じるかもしれませんが、争点によっては、調停ではなく訴訟等で解決しなければならない問題もあります。
遺産分割でお困りのことがあれば、弁護士にご相談ください。